外科矯正とは?
外科矯正とは、あごの骨格的なズレが大きい場合に、手術と矯正治療を組み合わせて行う治療方法です。
通常の矯正治療だけでは改善が難しい、受け口(下顎前突)や開咬、顔の左右差などに適応されます。

特徴

骨格から改善できる
上下のあごの位置や大きさを手術で整えるため、噛み合わせと顔貌の両方をバランスよく改善できます。

保険適用になる場合がある
顎変形症と診断され、大学病院など指定医療機関で治療を行う場合は健康保険が適用されます。

矯正治療と併用
手術前に矯正治療で歯を整え、手術後に仕上げの矯正を行うため、トータルの治療期間は2〜3年程度かかります。
注意点
手術は全身麻酔下で行われ、入院が必要です。
術後は腫れや一時的な違和感がありますが、通常は数週間〜数か月で回復します。
骨格的に大きな改善ができる分、負担もあるため、適応かどうかは精密検査と診断が必要です。
外科矯正の流れ
初診・相談
歯並びや噛み合わせ、あごの形についてお悩みを伺い、外科矯正が必要かどうかの初期診断を行います。
精密検査・診断
レントゲン(セファロ・パノラマ)、CT、歯型、写真撮影などを行い、骨格と歯列の状態を詳しく調べます。
その結果をもとに「通常の矯正で治療可能か」「外科矯正が必要か」を判断します。
術前矯正(約1〜2年)
手術の準備として、矯正装置で歯を並べ、上下の歯が正しい位置で噛み合えるように整えます。
この期間は手術後の噛み合わせを安定させるためにとても重要です。
外科手術
大学病院などで全身麻酔下にて行われます。下顎を後退させる、上顎を移動させる、または上下顎を同時に整えるなど、症状に応じた手術を行います。
入院期間は1〜2週間程度が一般的です。
術後矯正(約6か月〜1年)
手術で骨格を整えたあと、矯正治療で細かく歯並びと噛み合わせを仕上げます。
保定(リテーナー)
治療後の歯並びと噛み合わせを安定させるために、保定装置を使用します。
治療全体の期間
およそ2〜3年が目安です(術前矯正+手術+術後矯正を含む)。
術前矯正の必要性
外科矯正では、手術だけでなく 術前の矯正治療(術前矯正) がとても重要です。
手術で骨格を整えても、歯の位置が正しくなければ、理想的な噛み合わせを作ることはできません。
術前矯正の目的

歯を正しい位置に並べる
手術後に上下の歯がしっかり噛み合うよう、歯列を整えます。

手術の精度を高める
歯を理想的な位置に動かすことで、骨格の移動量や方向を正確に決められます。

治療後の安定性を高める
歯と骨格の両方を正しい位置に合わせることで、後戻りを防ぎやすくなります。

噛み合わせのシミュレーション
術前矯正を通じて、最終的な噛み合わせをあらかじめ確認できます。
メリット&リスク
メリット
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骨格から改善できる通常の矯正治療だけでは難しい、顎の大きなズレや左右差を手術で直接改善できます。
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顔貌(見た目)のバランスが整う受け口や出っ歯、顔の非対称などが改善され、横顔や笑顔が自然になります。
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噛み合わせの機能が向上するしっかり噛めるようになることで、食事や発音が改善され、日常生活が快適になります。
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長期的な安定が期待できる骨格レベルから正しい位置に整えるため、後戻りが少なく、矯正効果が長持ちしやすいです。
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保険適用になる場合がある顎変形症と診断された場合は、健康保険を使って治療できることがあります。
リスク
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手術に伴うリスク全身麻酔や外科手術を行うため、術後に腫れ・しびれ・出血などが起こることがあります。まれに神経の影響で口唇やあごに感覚の違和感が残ることもあります。
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入院・回復期間が必要手術後は1〜2週間程度の入院が必要で、日常生活に戻るまでに数週間〜数か月の回復期間を要する場合があります。
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治療期間が長い術前矯正・手術・術後矯正を含めると、治療全体に2〜3年かかることが一般的です。
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再手術や追加治療の可能性まれに予定通りに骨が動かない、後戻りするなどで追加治療が必要になることがあります。
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費用の負担保険適用となる場合もありますが、自費診療となるケースでは費用が高額になる可能性があります。
治療費
外科矯正は、通常の矯正治療と異なり 「保険が適用される場合」と「自費診療になる場合」 があります。
保険が適用される場合
(保険診療)
顎変形症(下顎前突、開咬、顔の非対称など)と診断され、指定医療機関で治療を行う場合は 健康保険の適用 となります。
矯正治療費と手術費用の両方が保険対象となり、自己負担は3割(高額療養費制度の利用も可能) です。
実際の自己負担額は、数十万円程度になることが多いです。
保険が適用されない場合
(自費診療)
顎変形症に該当しない場合は、矯正治療費は自費診療 となります。